理由は、AGA治療が命に関わる病気の治療ではなく、保険診療の対象外とされているためである。
ただし、薄毛の原因や治療内容によっては例外的に保険適用となるケースもあるため、同じ薄毛治療でも一律ではない。まずは保険適用の考え方と費用相場を確認し、自分に合う治療法を比較して選ぶことが重要だ。
- AGA治療は原則自由診療で、保険適用は基本的に難しい
- 費用は目的(予防/発毛)で変わり、月額の目安を把握することが大切
- 料金の落とし穴を避け、ジェネリックやプラン設計で無理なく続けよう
薄毛治療は保険適用になるのか
薄毛治療は、保険適用となるケースと自由診療となるケースに分かれる。これは、「薄毛」と一言で言っても原因となる疾患に違いがあるからだ。
円形脱毛症や脂漏性皮膚炎といった疾患が原因となる脱毛症の場合、保険の範囲内で治療が可能なケースがある。しかし、加齢やAGAを原因とした薄毛の場合、保険は適用されず自由診療となるのが一般的だ。
ここからは、AGA治療と保険適用について情報を整理していく。
原則は自由診療
これは、日本の公的医療保険ではAGA治療が通常、保険給付の対象外であり、自由診療として扱われるためだ。
日本の公的医療保険制度は、病気や怪我の治療など、健康の維持・回復を目的とした医療行為を対象として給付が行われる仕組みとなっている。そのため、生命や身体機能に直接的な影響を及ぼす可能性が低い外見上の悩みの改善や、美容・審美を主な目的とした医療行為では、原則として保険適用の対象外となってしまう。
AGAは、男性ホルモンの影響によって進行する脱毛症であり、国際的にも「疾患」として認識されている。しかし、日本の公的医療保険制度では、AGAは保険給付の対象となる疾病治療には含まれていないのが現状だ。
この扱いは、医療機関によって変わるものではなく、自由診療を中心とするクリニックでも、保険診療を中心とする皮膚科でも対応は同じである。AGAと診断された場合、治療は自由診療となり、発生する費用は全額が患者側の自己負担となる。
例外が起こり得るケース
前項ではAGAは健康保険の適用外だと解説したが、すべての抜け毛・薄毛症状が自由診療となるわけではない。同じような抜け毛・薄毛のお悩みであっても原因はさまざまで、中には保険適用となる疾患が原因となっているケースもある。
保険適用での治療が可能となるケースとしては、自己免疫疾患の一種である円形脱毛症や、頭皮の炎症によって抜け毛が起こる脂漏性皮膚炎・強いストレスや体調不良をきっかけとして起こる休止期脱毛などがあげられる。
これらは、男性ホルモンの影響によって進行するAGAとは異なり、免疫異常や炎症・精神的ストレスが引き金となって発症する脱毛症だ。こうしたケースでは、見た目の悩みへの対応ではなく、原因となる疾患や体調不良を診断・治療することが目的となるため、保険診療の対象となる場合がある。
まず確認すべきポイント
髪の毛に違和感や変化を感じた場合には、AGAだと決めつけるのではなく、自身の状態を冷静に観察し記録をしておくことが大切だ。
- 頭皮の状態:強い痒みや赤み・ベタベタしたフケは出ていないか
- 抜け毛の状況:抜け毛の量を写真におさめておくとよい
- 生活習慣の変化:強いストレスを感じる出来事や環境の変化、薬の服薬などはあるか
- きっかけ:他人からの指摘や写真など、何をきっかけに気になり始めたのか
これらの情報を整理し、受診時に医師に伝えられるようメモなどにまとめておくとよいだろう。気になることがあれば、AGAかどうかの判断も含め、医療機関を受診して医師の診察を受けるところからはじめてほしい。
そもそも薄毛治療とは?
ここからは、薄毛治療(AGA治療)とは具体的にどのようなものかについて解説していく。
AGA治療では、「進行を抑える」「発毛を促す」という2つの軸で治療が行われる。医師は、髪の毛の状態や患者側の希望を考慮しながら、治療プランを検討していく。
まずは、AGAについての基礎的な知識をおさらいしよう。
AGAが起こるメカニズム
AGAとは男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia)の略称で、男性ホルモンの影響などによって、生え際や頭頂部の髪が少しずつ薄くなっていく疾患だ。
体内で生成されるDHT(ジヒドロテストステロン)が毛包に作用し、ヘアサイクル(毛周期)の短縮を引き起こすことが主な原因と考えられている。髪は本来「生える→育つ→抜ける」という周期を繰り返すが、毛周期のサイクルが短くなることで十分に成長する前に抜け落ち、細く短い毛が増えることで徐々に薄毛が進行していくという仕組みだ。
出典:公益社団法人日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
どの段階からAGAと判断されるのか(目安と受診の基準)
医療機関では、問診・視診に加え、必要に応じた検査を行いながら頭皮や毛髪の状況を確認し、原因を判断していく。
- 生え際:額が広くなった、左右の剃り込みが深くなったと感じる
- つむじ:以前より地肌が目立つようになった、渦がはっきりとしなくなった
- 抜け毛の様子:産毛のような細く短い毛が抜けている
これらはAGAの初期症状の可能性がある。AGAは進行性という特徴があるため、「まだ大丈夫かな」「もう少し気になったらでいいかな」と放置すると、進行の程度によっては選択できる治療の幅が限られる可能性もある。
日常でもつい周囲の髪ばかり気にしてしまう等といった気持ちを感じている場合には、一度医療機関での受診を検討してみるとよいだろう。
保険が使える脱毛症とAGAは何が違うのか
「薄毛治療は保険適用になるのか」でも解説したように、同じような薄毛症状であっても保険が使える脱毛症とAGAは別のものだ。
円形脱毛症や脂漏性皮膚炎は、身体の異常・病気が原因となって起こる脱毛である。また、薬剤性脱毛が疑われる場合もあり、原因薬剤や脱毛のパターンに応じた評価が必要である。
一方のAGAは、加齢や遺伝といった体質的な要因が大きく関係しており、生命に関わる重篤な疾患とはみなされていない。
いずれの場合も、その抜け毛がAGAなのかどうかを自分で見分けることは難しい。保険は使えないだろうからと受診を控えたり、市販の育毛剤で対処しようとするのではなく、まずは医療機関を受診し、薄毛の原因について医師の判断を受けることが大切だ。
薄毛治療の保険適用外の費用相場はどれくらいか
AGA治療は原則として自由診療で、費用は全額自己負担となる。具体的な金額は受診する医療機関によって異なるため、事前に目安を把握しておくことが大切だ。
まずは主な治療プランごとの費用目安を知り、自分のライフスタイルや予算に合った、無理のない計画を考えてみよう。
ケース①:進行を止めたい(予防・維持が目的)
「これ以上、AGAを進行させたくない」「症状が進行する前に対策を取りたい」といった予防や現状維持を目的とする場合、内服薬を用いた治療が提案される傾向にある。
| 費用の考え方 | 薬代、診療代、交通費等 |
|---|---|
| 月額費用目安(税込) | 3,000~8,000円 |
| 通院頻度の目安 | 1か月に1回 医師の判断によっては3~6か月に1回程度の場合もあり |
※本情報は、一般的な情報提供を目的とするものであり、医学的な診断や特定の効果を保証するものではありません。効果の現れ方・感じ方には個人差があります。※AGAの治療は自由診療です。受診する医療機関によって金額が変わってきます。
ケース②:発毛も狙いたい(改善が目的)
「現状維持ではなく、薄くなった部分の改善を目指したい」「健康的な髪を増やしたい」といった目的で治療する場合、ケース①に別の薬や処置をプラスする治療が提案される傾向にある。
なお、ミノキシジル内服薬はAGA治療目的では国内未承認であり、処方内容は医師と確認したい。薬が増えるため、ケース①より費用は高めになると思っておこう。また、必要に応じて血液検査や注入治療など追加の検査や施術により費用が発生する場合もある。
| 費用の考え方 | 薬代、診療代、交通費、必要に応じた検査代・施術代 |
|---|---|
| 月額費用目安(税込) | 10,000~30,000円 |
| 通院頻度の目安 | 1か月に1回 医師の判断によっては3~6か月に1回程度の場合もあり 服薬以外の施術や検査を必要とする場合は医師の判断により変動 |
※本情報は、一般的な情報提供を目的とするものであり、医学的な診断や特定の効果を保証するものではありません。効果の現れ方・感じ方には個人差があります。
※AGAの治療は自由診療です。受診する医療機関によって金額が変わってきます。
薄毛治療が保険適用外でも費用を抑える方法
保険が適用されない中でも、無理のない費用感で計画的に治療を始めるためには、複数の医療機関を比較・検討することが大切だ。また、単に「安さ」だけで選ぶのではなく、薬ごとの価格差の理由を理解し、納得感をもって治療プランを考えることも、自身の健康を守る上で重要なポイントとなるだろう。
費用を抑えながら治療を始める上で意識したい3つのポイントを紹介する。
料金の見方:初月価格・定期・診察料・検査料の落とし穴
AGAは保険適用外の自由診療であるため、設定価格や費用の考え方は医療機関ごとに異なる。そのため、単に薬代だけを比較するのではなく、発生する費用の総額で考えることが大切だ。
- 診察料(初診料や再診料)
- カウンセリング料
- 検査代
- 予約料
- キャンセル料
- 配送料
- 事務手数料
- システム利用料
薬代にすべての費用が含まれている医療機関もあれば、初診料は無料だが、2回目以降は診察料料が発生する、もしくは、薬の処方を受けた場合のみ診察料が無料になるなど、料金体系はさまざまだ。また、初月限定価格などの割引制度を設けている場合もある。
ジェネリックの考え方
費用を抑えたい人に選ばれる傾向にあるのが、ジェネリック医薬品(後発医薬品)だ。特許切れの先発薬と同成分で製造される後発薬は、開発費がかからない分、薬代を安く抑えられることが多い。
出典:厚生労働省「後発医薬品(ジェネリック医薬品)及びバイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進について」
ただし、日本で承認されていない海外製医薬品には注意が必要だ。海外製の医薬品の中には、日本と異なる法制度や製造管理体制の下で製造されている場合があり、品質性が確認されていない成分が含まれていたり、品質管理の面で問題が生じるリスクも指摘されている。厚生労働省の承認を得ていない医薬品を使う場合には、医師から副作用などのリスクについて十分な説明を受けたうえで慎重に検討してほしい。
無理なく続くプラン設計
治療計画を立てる時は、「期待できる効果」と「費用」のバランスをしっかりと考え、無理のないプランでスタートすることが大切だ。
まずは抜け毛を抑えることを最優先にしながら、費用面での余裕があれば発毛を促す薬や施術を検討するなど、自分の中での優先順位を決めることから始めるとよい。
予算については、受診時に「月〇〇円以内で抑えたい」「予算は月に〇〇円位を想定している」と医師に素直な気持ちを伝えるのも方法の一つだ。
また、定期配送やまとめ処方を活用するのも継続のコツとなるだろう。医療機関によっては、毎月の受診で処方を受ける場合と、定期便や複数月分まとめ処方とで薬単価を変えているケースもある。
背伸びしたプランよりも、コツコツと無理なく継続できるプランから始め、医師と相談しながら検討を進めることを意識してほしい。
薄毛治療は「やめたら元に戻る」は本当?
治療のやめ時がわからず治療に踏み切れないという人もいるだろう。AGA治療が「やめたら元に戻る」と言われてしまう理由と、疾患の性質からみる治療計画についての考え方について解説する。
AGAの性質(進行性)と治療の位置づけ
AGAは一度発症すると自然に治ることはなく、症状がゆっくりと進行していく性質をもつ。現在主流となっている治療法は、AGAの原因とされるDHTがヘアサイクルに悪影響を及ぼすのを抑えたり、頭皮の血行を促して発毛を助けるというものだ。
そのため一定の改善が見られた場合でも、治療をやめると再びDHTの影響を受けて毛周期が短くなり、治療前の状態や加齢に伴う自然な進行状態に戻る可能性がある。
出典:公益社団法人日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
やめる・減らす判断の前に確認すべきこと
「やめたら元に戻るなら一生治療を続けるのか?」と不安になる人もいるだろう。しかし実際には、効果の感じ方やライフステージの変化に合わせて、段階的に治療法を調整するケースが多く、開始当初のプランを何年もそのまま続けることは少ないとされる。
自分に合う薄毛治療の選択肢を選ぶポイント
AGA治療に対応した医療機関は、対面型・オンライン診療など多岐にわたる。自分の希望やライフスタイルに合った受診先を選び、継続的な治療につなげてほしい。
信頼できる医療機関を見極める
説明の透明性や費用の明細・診療体制など、自分が信頼できると感じる医療機関を選ぶことが大切だ。
- メリットだけでなく副作用やリスクについても丁寧な説明があるか
- ホームページに記載の額との大幅な差や高額プランへの勧誘はないか
- 継続した通院がしやすい環境(時間・オンラインの可否・費用面)が整っているか
- アフターフォローや相談のしやすさなどに問題はないか
ホームページの内容やネット上の口コミだけで判断するのではなく、上記のポイントを意識しながら、実際にカウンセリングを受けて医療機関の姿勢を自分の目で確認するとよいだろう。
治療方針を決める(目的・予算・優先順位)
まずはAGAとその治療法・費用感といった知識を深め、自分の希望や予算について考えを整理してから受診するとよい。
進行を止めることor髪の毛を増やすことといった優先順位についても考えておくことで、カウンセリング時に提示されたプランが自分に合っているかどうかを冷静に判断できるようになるだろう。
薄毛治療の薬の特徴と副作用
AGA治療で主に使われる薬にはそれぞれ特徴があり、発生する可能性のある副作用や注意点も異なる。代表的な3種類の薬と、市販で購入できるサプリメントや育毛剤との違いについて見ていこう。
抜け毛を抑える薬(フィナステリド・デュタステリド)
フィナステリドやデュタステリドは「守りの薬」とも呼ばれ、DHTの生成を抑えることで乱れたヘアサイクルを正常に戻すことを目的に処方される内服薬だ。
性欲減退や勃起機能不全(ED)などの副作用が報告されている。また、女性や小児には使用できず、妊娠中または妊娠の可能性がある女性は粉砕・破損した錠剤やカプセル内容物に触れないよう注意が必要である。さらに、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAの値に影響するため、前立腺がんの検査を受ける際は服用中であることを医師に申告したい。
参考:医薬品医療機器総合機構「プロペシア〈フィナステリド〉添付文書**2023年8月改訂(第4版)
参考:医薬品医療機器総合機構「デュタステリド錠0.5mg添付文書**2023年6月改訂(第1版)」
発毛を後押しする薬(ミノキシジル)
ミノキシジルは「攻めの薬」とも呼ばれ、血管拡張作用などにより毛包の働きをサポートし、発毛を促すと考えられている薬だ。内服薬(国内未承認)と外用薬(国内承認あり)があり、内服薬は全身に作用するのに対し、外用薬は塗布した部分のみ作用するという違いがある。
血管拡張作用により動悸・息切れ・頻脈などが起こる場合や、外用薬の場合には赤みやかぶれ・かゆみといった副作用が報告されている。
参考:シオノケミカル株式会社「壮年性脱毛症における発毛剤ミノキシジルローション5%「JG」」
医療用(処方薬)と市販薬の違い
フィナステリドとデュタステリドは医療用医薬品で、医師の処方が必要である。一方、ミノキシジル外用薬には第1類医薬品として市販されている製品がある。なお、市販の育毛剤は医薬部外品が中心で、頭皮環境の改善を目的とするものが多い。
薬を使う目的や安心感、費用面などを総合的に考え、自分に合ったケア方法を検討してほしい。
薄毛治療は原則保険適用外!予算を立てて計画的に始めよう
当記事では、薄毛治療に保険は適用されるのかどうかという観点から、AGA治療の費用面について解説した。
薄毛治療は原則として保険適用外の自由診療となるため、費用は全額自己負担となる。また、医療機関によって費用体系が異なる点も押さえておきたい。
AGA治療では、乱れたヘアサイクルを整えるという性質上、ある程度の継続が前提となる。そのため、生活に無理のない範囲で予算を立て、計画的に治療プランを検討することが重要だ。
毎月数千円程度から始められるプランを提供しているクリニックもあり、保険適用外だからといって市販の育毛剤やサプリメントの方が必ずしも安いとは限らない。総額を比較して受診先を選んだり、定期配送やまとめ処方などのサービスを活用したりすることで、無理なく続けやすいプランを見つけられる可能性もあるだろう。
AGA治療に興味のある人は、「保険適用外ならやめておこう…」と判断する前に、まずは複数のクリニックの情報を確認し、費用相場を把握するところから始めてみてほしい。





